Terumi Morita
June 12, 2026·レシピ

カレカレ(フィリピン風ピーナッツ煮込み)

Kare-Kare (Filipino Peanut Stew)|フィリピン料理

フィリピンのカレカレは、コクのあるピーナッツソースで煮込んだ牛尾とトライプの料理です。

目次(5項)
オレンジブラウンのピーナッツシチューに牛尾と野菜、隣にエビペーストの小皿がある風景。
レシピフィリピン料理
下準備20分
加熱3時間
人数4 人分
難度ふつう

材料

  • 牛尾 1 kg
  • トライプ 300 g
  • 水 2 L
  • ピーナッツバター 200 g
  • 玉ねぎ 1 個
  • にんにく 4 片
  • 生姜 1 片
  • ナス 1 本
  • いんげん 200 g
  • 魚醤 大さじ 2
  • 塩 適量
  • 黒胡椒 適量
  • エビペースト 100 g

手順

  1. 牛尾とトライプを水に入れ、強火で沸騰させ、アクを取り除いた後、中火にして約3時間煮込みます。

  2. 玉ねぎ、にんにく、生姜をみじん切りにし、鍋に加え、さらに30分煮込みます。

  3. 牛尾が柔らかくなったら、ピーナッツバターを加え、よく混ぜてから煮ます。

  4. ナスといんげんを加え、さらに15分間煮込んで、野菜が柔らかくなるまで火を通します。

  5. 最後に、魚醤、塩、黒胡椒で味を調整し、器に盛り付け、エビペーストを添えて提供します。

なぜこれが効くか

このレシピでは、牛尾をじっくりと煮込むことでゼラチン質が出て、リッチな食感を生み出します。ゼラチンが溶け出すことにより、ピーナッツバターを加えたときに滑らかで濃厚なソースになります。また、エビペーストの塩味が、ピーナッツの甘みと絶妙に対比し、全体の味を引き締めます。もしソースがあまりにも厚すぎたら、水を少しずつ加えて調整してください。逆に薄すぎる場合は、中火で煮詰めて濃度を高めることができます。これにより、理想的な食感と風味を実現できます。

ありがちな失敗

牛尾の煮込み不足。
目安: 弱火で2時間半〜3時間。フォークが抵抗なく刺さり、骨周りの筋(腱)が透明になりゼリー状になるまで。骨が簡単にはずれる状態が完了サイン。
なぜ大事か: 牛尾は運動量の多い筋肉に厚い結合組織(コラーゲン — 筋繊維をまとめているタンパク質)が巻き付いた部位です。芯温がおよそ70℃前後で長時間経過すると、このコラーゲンが加水分解してゼラチン(コラーゲンが液状になったもの — スープに体(コク)を与える)に変わります。煮込みが足りないまま取り出すと、肉は繊維がほどけず硬く、汁も薄いまま — ソースのねっとりした艶と重さを生むのはゼラチンなので、ここを飛ばすと料理が成立しません。強火で時間短縮しようとすると、コラーゲンが変わる前に筋繊維だけがさらに硬くなる。
どうするか: ごく弱い沸騰(小さな泡がのんびり上がる程度、グラグラ煮立てない)に設定して放っておく。最初の30分はアクを取り、その後は触らない。2時間半でいちばん厚い部分にフォークを刺してテスト — 抵抗があればさらに30分。

沸騰中の煮汁にピーナッツバターを投入する。
目安: ピーナッツバターと炒りピーナッツの粉を加える前に弱火に落とす。加えたら絶えず混ぜながらとろみが付くまで。
なぜ大事か: ピーナッツバターは「ピーナッツの油」と「ピーナッツの固形分」のエマルジョン(マヨネーズと同じ油・水の混合構造で、卵黄ではなくピーナッツの組織が結合剤)です。グラグラ沸騰した液体にいきなり投入すると、油が分離して表面に浮き上がり、料理は「とろみのあるソース」ではなく「油っぽいスープ」になる。弱火なら、ピーナッツの固形分が水分を吸い、すりピーナッツのデンプンが汁にとろみを付け、油は分離せずに留まる。
どうするか: いったん火を止め、温かい煮汁を一杯すくってピーナッツバターを溶きほぐしてから(こうすると緩みやすい)、鍋に戻して弱火で煮る。最初の数分は止めずに混ぜ続ける。

ナスといんげんを煮込みすぎる。
目安: 野菜は別鍋で歯ごたえが残る程度に火を通す — ナスは4〜6分、いんげんは3〜4分。そして仕上げ直前にソースに合流。
なぜ大事か: ピーナッツソースの中で長く煮込むと、ナスは形を失ってドロドロになり、いんげんはオリーブ色にしぼむ。シルキーなソースと野菜のシャキッとした食感のコントラストが、この料理の半分。失えば、ただの一色の茶色いシチューになる。
どうするか: アナトーオイル(オレンジ赤色の天然色素であるアナトーシードで色付けしたオイル — カレカレの伝統的な発色剤)でソテーして、火を通すだけ。ソースが完成してからの最後の2〜3分だけ合流させ、温める程度に留める。

バゴオン(エビペースト)を入れない/鍋に混ぜ込む。
目安: バゴオン・アラマン(発酵させたエビペースト — ピンクグレー、塩味と強い旨味)を別添えで小皿に。鍋には絶対に混ぜ込まない。一人当たり小さじ1から、味を見ながら追加。
なぜ大事か: カレカレのピーナッツソースはあえてマイルドで、わずかに甘い味付けです — 料理は食べる人の皿の上で塩味と旨味を加えて完成する設計になっている。バゴオンなしでは全体が単調で、平坦な味になる。鍋に混ぜ込んでしまうと、ソース全体が均一に塩辛くなり、食べる人が「ひと口ごとに調整する」自由が失われる。
どうするか: 一人分ごとに小皿でバゴオンを添える。フォークの一口ごとにちょっと付けて、味を確かめながら食べる。

見極めのポイント

  • きちんと煮込めた牛尾: フォークで軽く押すだけで骨から肉がはずれ、骨周りの筋がガラスのように透き通ってゼラチン質になっている。 抵抗があるならまだ早い。
  • 仕上がりのピーナッツソース: スプーンの背を覆い、指でなぞった跡がしばらく残るくらいのとろみ。表面にオレンジ色の油が浮いていない。 油が分離していたら、ピーナッツバター投入時の火が強すぎた。
  • 野菜の火加減: ナスはなめらかだが形を保ち、いんげんは鮮やかな緑色で折るとパキッと音がする。 オリーブ色のいんげんは煮込みすぎ。
  • 盛り付け時: ソースが肉と野菜それぞれにしっかり絡んでいる。別添えのバゴオンはピンクグレーでわずかに油気がある状態(乾いて灰色がかってない)。

歴史メモ

カレカレの正確な起源は複数の説があり定説はありません。よく引かれる説は、18世紀にマニラ近郊に駐留したインド人のセポイ兵が、カレーに似たナッツとスパイスのソースを持ち込んだという説。カパンパンガン族(パンパンガ地方の人々)が起源を主張しつつ、その名がタミル語のkari(ソース)に由来することを認めている説。そして、東南アジア交易路を通じた植民地以前のマレー・インドネシア交易の中で、すでにココナッツやピーナッツでとろみを付けた煮込みが地域料理として共有されていたという説。パシッグ川流域のタガログ族の伝統には独自のkari-kariの系統があり、それが音便で現在の名前に変化したともされる。確かなのは、19世紀までにこの料理がフィリピンの祝祭料理の定番となっており、牛尾とトライプを使う点が、動物を頭からしっぽまで余さず長時間かけてゼラチン質豊かな滋養に変える、フィリピンらしい節約と歓待の論理を映していることです(Wikipedia, Tasting Table, Radar)。

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